秋は要注意!呼吸器トラブル
秋に気をつけることを教えてください。
秋の朝晩は気温が低く、寒さを感じる日もありますが、日中は気温が上がり、夏のような暑さの日も多いです。この激しい寒暖差によって影響を受けるのが、私たちの肌や髪。体の外側が乾燥しやすくなりますが、秋は体の内側の「肺」へのダメージも大きくなります。
肺は、呼吸を通して空気に触れる臓器のため外気の影響を受けやすく、乾燥によって肺の機能が低下。これによって、呼吸器系の症状が起こりやすくなり、病原体も入り込みやすくなります。
秋にもっとも多い呼吸器の症状は咳です。かぜなどの感染症に伴うものが多く、数日から1週間程度で自然に収まりますが、かぜをきっかけに気管支炎や肺炎を発症することもあるので油断は禁物です。
また秋は一年の中でもっとも気管支喘息が悪化しやすい時期として知られています。気道に炎症が起こることで、咳や痰、息苦しさ、気道が狭くなりゼーゼー・ヒューヒューといった音がでる喘鳴、胸が苦しいなどの症状が現れます。
鼻炎や結膜炎、喘息などのアレルギー症状を引き起こしやすいのも秋です。実は秋は春に次いで花粉症の季節。特にブタクサによるアレルギー症状は、咳が出やすいという特徴があります。そして症状がよく似ていて流行時期が重なるのが、ダニアレルギー。ダニは夏の間に繁殖し、9月頃から死骸となり、空気が乾燥する秋から冬にかけて空気中に舞い上がりやすくなります。それらを吸い込むこと、アレルギー症状を引き起こす可能性が高まります。
秋はこれから迎える冬に備えるためにも、免疫力を高めることが大切になります。適度な運動を心がけ、栄養豊富な食事や水分を含んだ食材を意識的にとり、しっかりと体づくりを行いましょう。
乾燥対策に効果的な食べ物を教えてください。
秋は肌や肺にうるおいを与え、体の乾燥を防ぐものを食べるように心がけると良いでしょう。9〜11月に旬を迎える梨は、のどをうるおし、咳を静める働きがあります。生で食べるだけでなく、煮るのもおすすめ。ただし、体を冷やす性質があるので、食べ過ぎには注意しましょう。
れんこんも肺をうるおす食材のひとつで、乾燥して熱を帯びた「肺」の熱を取る働きもあります。
刻んだり、すりおろして皮ごと食べても良いでしょう。皮にもたくさんの栄養が含まれています。
他にも、山芋や大根、白きくらげなども肺をうるおすと考えられています。白い食べ物が多いので、“秋は白い食べ物”と覚え、積
極的に食事に取り入れるようにしてください。
乾燥時期の加湿やうるおい対策を教えてください。
秋から冬は暖房器具を使用する機会も増えるため、湿度が下がります。40%以下になるとウイルスが活発になりかぜを引きやすくなるので、50〜60%程度を目安に加湿しましょう。加湿器がない場合は濡れたタオルを部屋に干したり、入浴後に浴室のドアを開けておくのも効果的です。
しかし、湿度が高くなりすぎると、カビやダニを発生させる原因になりますので、適度な湿度に調節するようにしてください。
乾燥すると、のどに痛みを感じたり、食べ物が飲み込みづらくなることもあります。のどの乾燥が気になる場合は、飴をなめてみてください。飴をなめると、唾液の分泌が活発化して、のどにうるおいを与え、咳を鎮める効果もあります。外出時は鞄に何個か入れておくと安心です。
寒い時期は汗をかく機会が少ないため、水分補給を忘れがちに。体の水分量が低下してしまうので、意識的に常温の水や白湯などをとるようにしましょう。
秋は“体をうるおす”ことを意識して、できることから始めましょう。
今回お答えいただくのは
岸本 久美子 先生
ハピコワクリニック五反田院長 呼吸器内科・アレルギー専門医