知って得するアブラの話
スーパーの食用油売り場に行くと、様々な種類の油製品が並んでいます。魚や肉のアブラと何が違うの?どれを選んだら良いの?と思われている方も多いのではないでしょうか。今月はアブラと健康の関係をご紹介します。
◆◇アブラとは
“アブラ”には「油」と「脂」の2種類の漢字があります。常温で液体のものが“油”で、代表的なものはコーン油やオリーブ油など植物が原料の食用油です。健康に良いと話題の魚が原料のDHAやEPAも油です。また、常温で固体のものが“脂”で、動物が原料のバターが代表ですね。ちなみにオリーブ油は約10℃以下では固体になり、バターは約40℃以上で液体になります。油も脂も主に脂肪酸という成分でできていて、大きくは表のように不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸(以下、オメガ3、オメガ6)は人の体内でつくることができないので食品から摂取する必要があり、必須脂肪酸と言います。これらは血管や赤血球の細胞膜に柔軟性を持たせることができるので、血液はサラサラと流れていきます。ただし、これらの油はとても不安定で、酸化されると健康効果を失ってしまいます。それに対して飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、血管や赤血球を固くしてしまい、血液の流れが悪くなります。動脈硬化の始まりです。これが「身体に悪い」と言われる由縁です。
◆◇健康とオメガ3
今、注目を集めているオメガ3のDHAやEPAには中性脂肪を減らす働きがあるほか、DHAは集中力や判断力、処理能力を改善したり1)、EPAは骨密度を増やしたりします2)。オメガ3が豊富なイワシは、骨形成を助けるビタミンDも豊富で、手軽に骨も食べられる缶詰がオススメです。リノレン酸には内蔵脂肪を減少させる効果があります。
◆◇何をどのくらい摂ればいい?
オメガ3は、2020年日本人の食事摂取基準で18歳以上の女性の1日あたりの摂取量は1.6g~2.0g、男性では2.0g~2.2gが目安とされています。加熱を避け、保存に注意しましょう。オメガ6脂肪酸の摂取基準は、それぞれ7g~8g、9g~11gです。ただ、オメガ6をオメガ3よりも多く摂ると心臓病での死亡リスクが高くります。日本脂質栄養学会が推奨しているオメガ6とオメガ3の理想的な摂取比は2:1です。
えごま油やしそ油は発泡ポリスチレンを溶かすことがあるので、カップ麺などを食べる際、お湯を注ぐ前に入れないようにしましょう。オリーブオイルはオレイン酸の他にリノレン酸やリノ―ル酸も含みます。オススメは大さじ1.5杯程度(約16g)です。
◆◇脂肪酸はバランスが大事
飽和脂肪酸は摂りすぎると体重や悪玉コレステロールの増加を招きますが、エネルギー供給源として必要なものです。2020年日本人の食事摂取基準では、成人の男女とも7%エネルギー以下とされています。豚バラ肉で100g程度が目安です。トランス脂肪酸の工業的に造られたものは、海外で心血管疾患などのリスクがあるという報告があり、トランス脂肪酸として1%エネルギー未満が推奨されています。日本人の平均摂取量は0.3%程度なので影響はほぼありませんが、摂りすぎに気をつけましょう。エネルギー過剰で肥満にならないように、日頃からBMIをチェックすると良いでしょう。
一つの脂肪酸に偏らず、いろいろな種類の脂肪酸を上手に使い分けて、血管も骨も頭も元氣になりましょう!
参考)
1)The Am.J.Clin.Nutr., 2013, 97, 1134-1143
2)日本油化学会誌, 2000, 49,11・12号 1391-1446
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