虚血性心疾患
by Masahiro Hirase(湧永製薬 学術・営業薬制部)
心疾患は日本人の死因の第2位となっていますが、この中でおよそ半数を占めているのが虚血性心疾患です。厚生労働省の平成29年度人口動態統計では、虚血性心疾患による死亡者数は約7万人で、男性が約4万人、女性が約3万人となっています。
◆◇虚血性心疾患ってどんな病気?
心筋(心臓を動かす筋肉)に酸素や栄養素を含んだ血液を供給している冠動脈が何らかの原因で狭くなったり、塞がってしまうと、需要に見合った血液を心筋に送ることができなくなり、心筋が血液不足に陥ります。このような病態を虚血性心疾患といいます
◆◇虚血性心疾患の種類
虚血性心疾患のうち、心筋の血液不足が一過性で心筋の障害が一時的な場合を「狭心症」といい、不足が持続するために心筋が壊死に陥るものを「心筋梗塞」といいます。狭心症では心筋が回復しますが、心筋梗塞では、壊死した心筋が回復することはありません。
〇狭心症
血管のけいれんが原因で一時的に血流が不足する「血管れん縮性狭心症(安静狭心症)」と、動脈硬化(血管の老化)により血管内膜に脂質や白血球等が固まったプラークが形成されて普段から血流が悪くなり、運動等をした際に必要な血液が不足する「労作性狭心症」の2タイプに分けられます。
◆症状の特徴
①胸が締めつけられる痛みに襲われ、痛みが首筋、肩ないし腕の内側に広がることもある。
②数分以内に痛みが治まる。
③高齢者・糖尿病の人では典型的症状が出にくい場合がある。
〇心筋梗塞
動脈硬化により形成されたプラークが何らかのきっかけで破裂したり、狭くなった箇所に血液の塊である血栓が生じて冠動脈を塞いでしまうことで発症します。
血栓により、血流が完全にストップしてしまうと、その先の心臓の筋肉に酸素や栄養が届かず細胞が壊死してしまいます。壊死の部分が大きくなると心臓の収縮・拡張ができなくなるため、緊急の治療が必要です。
◆症状の特徴
①胸が締めつけられる痛みに襲われ、冷や汗、嘔吐などのショック症状を伴う。
②30分以上継続する。
③重症の場合、顔面蒼白になり、意識不明に陥る。
◆◇虚血性心疾患にならないために
☆禁煙
タバコは血管の内皮に影響し、血管収縮、血液凝固、動脈硬化をもたらします。禁煙しましょう。
☆バランスの良い食事
欧米と比較して日本で心筋梗塞や狭心症が少なかった大きな理由の一つに食生活の差があります。食物繊維を多くとり、塩分は1日10g以下に抑え、ミネラルの多いバランスの良い食事にしましょう。
☆適度な運動
身体活動量が少ない人ほど虚血性心疾患にかかりやすいことが分かっています。週3~4回、30分以上の運動を心がけましょう。
☆ストレス解消
ストレスにより、心身ともに緊張した状態が続くと、交感神経の活動が高まり、副腎皮質ホルモンが盛んに作られるようになります。これらによってコレステロール濃度、血糖値、および血圧が上昇し、動脈硬化が進行しやすくなります。自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
参考)
1)病気がみえるvol.2, メディックメディア
2)からだの地図帳, 講談社
3) 病気の地図帳, 講談社
4) スーパー図解 狭心症・心筋梗塞, 法研
5) 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
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