適応障害は「うつ病」の一歩手前、日常生活で心がけることは?
by Naoyuki Takasugi ,Ph.D.(湧永製薬 学術部)
「適応障害」をご存知ですか?「うつ病」と似た症状もあらわれますが、実は異なる病気です。通常、「適応障害」は6ヶ月以内で症状が改善する場合が多く、「うつ病」の一歩手前の病態と捉えられています。
「適応障害」とは、「就職や転職・転勤、結婚など新しい環境にうまく適応できないなどして、さまざまな心身の症状があらわれてくることにより、社会生活に支障をきたす『心の病』のこと」をいいます。適応障害は、原因(ストレス要因)となるものがはっきりしているというのが特徴で、症状が出てきたら心の健康状態が低下しつつある危険サインと考えましょう。もし症状が軽くても、「適応障害」から「うつ病」に移行してしまう例が少なくないため、気の抜けない病気です。
★「適応障害」の発症原因★
「適応障害」は、性格が真面目でストレスに弱い人がかかりやすいといわれています。私たちは人生のなかで多少の苦労は伴いつつも、必要に迫られることで新しい環境に順応していきます。しかし、順応できない場合は「適応障害」となります。ストレス要因が会社にある場合は「職場不適応」、学校にある場合は「登校拒否」というかたちとなってあらわれます。例えば、会社で上司や特定の同僚との人間関係が上手く構築できなかったり、昇進や異動などの配置転換により新しい仕事環境に馴染めない、といったときに「職場不適応」がおこります。
★「適応障害」の診断★
「適応障害」は「ストレスから3ヶ月以内に発症し、通常予測される以上の症状であるか、その症状のために日常生活が障害されている場合」に診断されます。
★「適応障害」の身体・精神症状ほか★
・身体症状
全身倦怠感、不眠、頭痛、動悸、めまい、肩こり、食欲不振、ストレス性胃炎、腹痛などが表れます。
・精神症状
意欲や集中力の低下、注意力散漫、不安、絶望感、イライラ感、神経過敏、抑うつ気分、涙もろさ、興味・喜びの喪失、マイナス思考、自責的な考え方などが表れます。
・行動面の障害
対人関係への過敏性・攻撃性、気力低下、思考力・集中力低下などが表れ、職場不適応や登校拒否となります。
★「適応障害」と「うつ病」との違い★
「適応障害」は、「うつ病」と似た症状が現れることがあります。一方、「適応障害」はストレス要因となる空間や場所、そして人間関係などから離れることによって普通に過ごすことができますが、「うつ病」の場合は、四六時中その症状が消えないという点で、大きく異なります。
★日常生活での心がけ★
適応障害は、環境要因からの心理社会的ストレスにより、心身のバランスを崩した時に症状が現れます。そのため日常生活上での心掛けとして、適度の休養を確保したり、気分転換を図ったりして、日頃からストレスをためないような工夫をする必要があります。適切な相談相手を持って、一人でくよくよ考えないことや、人といかにうまく付き合い、その中でいかに自己実現するかというコミュニケーションスキルを身に付けることが有効です。
適応障害診断基準(DSM-Ⅳ) (米国精神医学会) 注) |
『ストレス要因が明確であり、そのストレスを受けてから、3ヶ月以内に情緒面や行動面において症状が発生し、社会生活に障害をきたす。また、原因となるストレス因子が排除されてから、6ヶ月以内に症状が軽快するもの。』
注)「適応障害」の臨床診断には、米国精神医学会が定めたDSM-Ⅳ(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 「精神障害の診断と統計マニュアル」)やWHOが定めたICD-10があります。日本の医療機関では、双方の診断基準をそれぞれを使い分けて診断にあたっています。 |
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