コロナ禍による運動不足や筋力低下が問題になっています。健康的な体づくりのために必要なことを専門家に教えてもらいます。
運動習慣を身につけよう
年齢を重ねると、筋力や体力が低下し、ひざや腰の痛みによって、身体活動※1が減少します。身体活動が低下することで、日常生活の質の低下を招くだけではなく、心筋梗塞や脳梗塞、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病にかかる可能性も高まるため、 効果的な運動習慣を身につけることはとても重要です。
運動を行うと、体力や持久力が向上し、徐々に筋肉量が増えていきます。筋肉量が増えると代謝もよくなり、糖尿病予防にも効果的でさまざまな病気の発症リスクを抑える効果が期待できます。
また、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動はエネルギーを消費するため、内臓脂肪が燃焼。内臓の働きもよくなり、糖や脂質の代謝、血流や血管壁の伸縮性も改善されます。肥満の予防や、血糖値や脂質、血圧の状態も改善されます。
最近では健康寿命を延ばすため、運動だけでなく、生活全体のなかで体を動かす時間を増やす取り組みも注目されています。通勤や買い物、家事など、日常のなかで、今より 10 分多めに体を動かすなどの意識をもつと良いでしょう。
※1 「身体活動」は、「生活活動」と「運動」に分けられる。このうち、生活活動とは、日常生活における労働、家事、通勤・通 学などの身体活動を指す。 また、運動とは、スポーツ等の、特に体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施し、 継続性のある身体活動を指す。
筋肉を鍛えて、健康長寿を実現しよう
何もしないでいると、人間の筋肉は加齢とともに衰えます。足腰の筋肉は 30 歳をピークに減少しはじめ、 80 歳までの 50 年間で筋肉量はピーク時の約半分になります。筋肉量の低下を防ぐためには、余力のある若いうちから筋肉を鍛えることが重要です。
最近、健康問題に関するキーワードで取り上げられている「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」「フレイル」があります。特にロコモやフレイルの状態が進行すると、誰かの手助けなしでは生活できない要介護になる可能性も高まります。
そこで中高年におすすめするのが、短い時間で効率よく筋肉を鍛えられるスロートレーニング( P7 )やウォーキング、水泳などの有酸素運動。特にウォーキングは必要な道具や環境は必要なく、いつでも、どこでも、誰でも行うことができます。
健康のためのウォーキングは、普段の歩きや散歩とは異なり、フォームを意識することが大切です。視線は自然に前へ、頭は空から引っ張られているような意識で背すじを伸ばします。ひじを曲げて腕を振り、 足は後ろ足のつま先で地面を踏み込むようにして重心を前に移動させます。
毎日 30 分程度行うのが効果的ですが、無理は禁物。屋外を歩くときは水分補給を忘れずに、体調がすぐれないときはお休みするなど、マイペースに行うことも重要です。大切なのは、続けることだということを忘れないでください。
筋肉のメカニズムを知ろう
筋肉とは、筋繊維と呼ばれる繊維状の細胞が束ねられて構成されています。一般的に筋肉と呼ばれるのは、骨とつながっている筋肉のことをいい、意識的に動かすことができ、鍛えることで肥大します。
この過程で必要なのは、休息と栄養です。筋肉が必要としているときに、栄養を送り届けなければ、栄養切れとなり、筋肉は強化されません。3食規則正しく食べることは栄養補給だけでなく、生活のリズムを整えることにもつながります。
筋肉がつく仕組みは、筋繊維のなかにある筋肉を動かすためのたんぱく質が増えることで、筋肉が太くなります。これを繰り返すことで、筋繊維はより太く、強くなるというわけです。この筋肉の回復材料となるのが、たんぱく質です。
筋肉を強くする食事法
たんぱく質を含む食品は、肉や魚、卵、牛乳や乳製品などの「動物性」と、大豆や大豆製品などの「植物性」があります。食事の際は、これらを組み合わせるのがおすすめです。
たんぱく質は小さなアミノ酸が無数につながったもので構成されていて、日々新しいものが作られ、古いものが壊されています。理想的なのは、毎日一定量のたんぱく質を取ることですが、難しい場合は必須アミノ酸などのサプリメントなども上手に活用するといいでしょう。 近頃では、筋肉の原料となるたんぱく源は食事を中心に摂取して、サプリメント等で筋肉の合成促進と分解抑制を刺激する方法が注目されています。運動・トレーニングと栄養摂取を組み合わせて行うことが大切です。
さらに、肉や魚などのたんぱく質が筋肉になるためにはたくさんのエネルギーが必要です。そのエネルギーの源となるのが、ご飯やパン、麺などの炭水化物、エネルギーを作るための補助をするのが野菜や海藻に含まれるビタミンやミネラルです。
すべての栄養素をバランス良く摂取することが、いい筋肉を作りだすカギとなるのです。
今回お話を伺ったのは