エアコンと扇風機が快眠の秘訣
日本の夏の夜は蒸し暑く、多くの人が寝苦しさなどの悩みを抱えています。厳しい暑さに加え、日本特有の湿度の高さが快眠を妨げているのです。
私たちの身体は、深部体温が下がってくると眠気を感じ、入眠スイッチが入る仕組みになっています。しかし、湿度が高いと汗が蒸発しにくいため、体温が下がらず、なかなか眠りにつくことができません。
夏に快適な眠りを得るためには、エアコンと扇風機を上手に使いこなすことが大切です。エアコンをつけると寒い、切ると暑い場合は、睡眠中の設定温度が低すぎます。まず、就寝1時間前に設定温度 25 ~ 26 ℃でエアコンをつけます。あらかじめ寝室を冷やしておき、眠りにつくタイミングで 27 ~ 28 ℃に上げます。眠りにつくとき、部屋が涼しいと身体の熱を逃がしやすいため、寝つきがよくなります。その後、熟睡モードに入ったころ室温も 27 ℃くらいに上がっているので、身体を冷やしすぎることなく、ぐっすり眠ることができます。熱帯夜は、朝まで冷房をつけておくことをおすすめします。
冷房が苦手な人は、扇風機を天井に向けて回し、首振りモードで寝室の空気をゆるやかに動かしましょう。このときは微風にするのがポイント。研究でも心地よい風は睡眠によい影響を与えることがわかっています。
寝具や寝巻にもひと工夫しよう
あまり知られていないのですが、寝苦しくて夜中に目が覚めてしまう原因のひとつが、背中の蒸れ。そのため夏は、通気性のよい涼しい寝具を使いましょう。立体構造で熱を逃がす高通気敷きパッドや、イグサや竹などでできたシーツは蒸れにくいので、涼しく眠ることができます。また、麻のシーツや敷きパッドは触ったときに冷たく、吸湿性・放湿性に優れています。
もっと手軽なのが、 100 円ショップなどで売られている、水草で粗く編まれた「シーグラスマット」を使う方法。玄関マットとして使用されることが多いですが、これを背中に当たるようにシーツの下に 敷きます。背中と布団の間にすき間ができ、風が通ります。
「抱き枕」もおすすめです。背中が大きくあくだけでなく、脇の下やひざの間にもすき間ができます。長さが 100 センチメートル以上あると、安定感があり安心して眠ることができます。ない場合は、使っていない掛け布団などを丸めてひもで結べば、抱き枕として使用することができます。
そして、寝るときは部屋着ではなく、パジャマに着替えましょう。汗をよく吸う吸湿性のよいもの、肌に触れたときにサラサラと心地よいものを選んでください。寝ているとき、肩やひじ、手首、ひざ、足首は冷えやすいので、半袖や七分袖に長ズボンが基本です。寝冷えを防ぐことができます。睡眠中に足がつりやすい人は、足を冷やさないようにレッグウォーマーなどの着用もおすすめです。ただし、靴下は放熱を妨げる原因になるので、やめましょう。
実践している人からも「よく眠れるようになった」「夜中に目覚めなくなった」と好評です。ぜひ、試してみてください。
質のよい睡眠が健康の秘訣
近ごろは香りも眠りによい効果を与えることがわかっています。温度や湿度が高くてもミント系のアロマを使ったら不快感和らいだ、快適性が得られたという研究報告もあります。覚醒系の香りなので、寝る前は控えめに使いましょう。清涼感のある香りを部屋に漂わせておくのも、真夏の夜を快適に過ごすための秘訣です。そして、夏でもシャワーだけですまさずに入浴で身体を温めましょう。先ほどもお伝えしたように、深部体温が下がると眠気スイッチが入ります。体温は1~2時間かけて下がるので、寝る時間から逆算して入浴をすませましょう。夏は冷房で身体も意外と冷えています。温めて一日の疲れをしっかりと取るようにしてください。
また、夏だけに限りませんが、過度のアルコールやたばこのニコチン、カフェインなどは眠りを妨げます。特に夏場は冷たい飲みものや食事を摂りがちです。冷たいものは消化の際、胃腸に負担をかけ、就寝までに消化しきれないこともあり、眠りの質が低下します。気をつけてください。
夏は暑くて体力も消耗しがちです。しっかりとした食事と適度な運動、そして質のよい眠りが欠かせません。熱帯夜も快適に乗り切り、元気な毎日を過ごしましょう。
今回お話を伺ったのは
三橋美穂 さん
睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て2003年に独立。これまで1万人以上の眠りの悩みを解決した経験をもつ。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースなども行っている。