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快適な冬を過ごそう

 現代人は50年前に比べると平熱が約1度下がっているといわれています。「冷えは万病のもと」といわれるように、「冷え」は体のさまざまな病気を引き起こす要因のひとつといえます。冷えの原因は外気温やエアコンの影響だけではありません。基礎代謝の低下、食生活やストレス、睡眠不足、運動不足などからも冷えは生じます。今回は効果的な冷え対策を特集します。

自分の平熱を知ろう

 最近は新型コロナウイルスの影響で毎日体温を測ることが習慣になっている人も多いと思います。平熱とは健康な安静時に決まった部位を決まった方法で測定した温度をいいます。 日本人の約7割は平熱が36・5〜37・1度。実は今、日本人の平熱は低下傾向にあり、 36 度以下という人が多く、「低体温」の人が増えています。その原因として、 内分泌疾患のほかに筋肉量が減ったことによる基礎代謝の低下、極端なダイエット、ファッション、老化、冷暖房の普及による体温調節機能の低下なども影響しています。
 なぜ、低体温がよくないのでしょうか。私たちは体温が上がると血流がよくなります。血液は体のなかのすべての細胞に酸素と栄養素を送り届け、 不要になった老廃物を回収、運び出す働きをしています。この巡りが悪くなると細胞が栄養不足になるだけでなく、免疫力が低下し、ウイルスや細菌に負けて病気になりやすくなります。また、体が冷えていると、血管を通る血液も冷えてしまい、冷えを悪化させてしまいます。
 体調を万全にし、病気をしない体を作るためにも、平熱を上げ、体の血流をよくすることがとても重要です。

冷えが体に及ぼす影響とは

 血液の巡りが悪い状態が続くと、新陳代謝が低下し、熱を生み出さないため、体温を維持することが難しくなります。また、代謝が落ちるため、太りやすくなってきます。
 ほかにも腸の働きが悪くなるため、便秘や下痢になったり、冷えて筋肉が固まるため、けがをしやすくなるなど、さまざまな悪影響があります。
 特に女性の場合は筋肉量も少ないため冷えやすいです。骨盤内には子宮や卵巣などがあるので、血流が滞ると不妊や婦人科系の病気につながる可能性もあります。体を冷やさない習慣を身につけることが大切です。

体温を上げる生活習慣

 私たちの体には、外側から温める方法として「温めポイント」がいくつかあります。覚えやすいのは、「首・手首・足首」の3つの首。 首や足首は皮下脂肪が少なく、皮膚のすぐ下を動脈が通っているので、マフラーやレッグウォーマーなどで外から温めると効率よく冷えが改善されます。
 また、下半身に冷えを感じる人は、腹巻きやカイロなどを使うのもおすすめです。
 内側から温める方法としては、食べるものをなるべく温かいものにしてください。朝起きてすぐに白湯を飲むと内臓から温まることを実感できます。食事の際もお味噌汁やスープなどを一緒に食べるようにするなど工夫しましょう。漢方を服用することも冷えの予防になります。

体を温める具体的な対策方法

 まずは3食しっかり摂ること。食事でエネルギーを摂ることで、全体の栄養素の 10 %が代謝熱として体を温めてくれます。たんぱく質は体温の上昇に効果があるので、肉・魚・大豆製品などを積極的に摂るように心がけてください。体温は一日のうちでは早朝が最も低く、次第に上がり、夕方に最も高くなって夜になると下がり始めます。朝食が体の熱を上げる効果が高いので、朝食は抜かないようにしましょう。
 また筋肉が減少すると熱を生み出しにくいので、ストレッチやラジオ体操で体をほぐし、スクワットなどで筋力トレーニングを行うのが効果的。普段からなるべく歩くようにし、脚の筋力アップを目指しましょう。ふくらはぎは第二の心臓といわれ、鍛えると全身の血流もアップし、代謝も上がります。ストレスや緊張状態が続くと呼吸が浅くなり、体の隅々まで酸素が行き渡りません。腹式呼吸や瞑想で自律神経を整え、リラックスする時間を設けましょう。 体を動かすのが苦手な方はまず、手を使って体の「お手当て」を。手のひらからも赤外線が出ているといわれています。「手を当てる」だけでも当てた部位が温まり、血行がよくなります。体をまめに「手当て」してあげましょう。
 40 度前後のお湯に 15 分程度ゆっくりと浸かると、筋肉のこりもほぐれ、全身の血流もよくなります。上がるときにぬるめのお湯を足先にかけると熱が逃げにくいので、ぜひ試してみてください。
 冷えに悩んでいても、病院に行く人は少ないのですが、冷えは未病(病気の一歩手前の状態)のサインです。あなたが今、困っている頭痛、不眠、肥満、便秘、下痢などは、冷えが原因かもしれません。重篤な病気が隠れていることもあるので、かかりつけ医に相談してみるのも対策のひとつ。内側からも外側からも温めて快適な冬を過ごしましょう。

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今回お話を伺ったのは

田邉真帆 先生

総合内科専門医・家庭医療専門医ほか。日々の暮らしに寄り添った医療を提供することをモットーにした診察・治療が特長のクリニック、大平医院副院長。

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