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疲労をためない生活習慣

 昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、肉体的にも精神的にも「疲労」を感じる人が増えています。そもそも「疲労」とは何なのでしょうか。疲れが発生するメカニズムや疲労回復に効果のある生活習慣を紹介します。

疲れの正体は「脳」

 疲労には、身体を動かしたときの身体的な疲れと頭を使ったときの精神的な疲れがあります。根本的にはどちらも同じもので、脳にある自律神経中枢の疲れです。
 自律神経とは、呼吸、消化吸収、血液循環、体温、心拍など、あらゆる生命活動をコントロールする司令塔で、交感神経と副交感神経の2種類あります。交感神経には身体を活発にする働きがあり、緊張や興奮状態のときに優位になり、反対に副交感神経は身体を休ませる働きがあり、リラックスした状態のときに優位になります。
 運動や仕事、気温差、ストレスなどは自律神経に大きな負担をかけます。その結果、機能が低下し、疲労を起こします。そのサインが脳に送られると、これ以上運動や仕事などを続けさせないよう「疲れた」と疲労感のシグナルを出すのです。防御的な反応が疲労と疲労感の正体といえます。

疲労回復のカギは「良質な睡眠」

 疲労を回復させるための重要なカギとなるのが、睡眠です。睡眠の一番の目的は、自律神経の疲れを癒し、前日までの疲労を解消すること。そのため、良質な睡眠とは、朝起きたときに前日の疲労が回復していてすっきりしていることが前提になり、睡眠時は自律神経が休まるよう快適な環境を整えることも必要になります。
 睡眠の質を悪化させる最大の原因は「いびき」です。いびきは舌が気道をふさいで、狭い状態のまま呼吸することで起こります。いびきで息を吸う深さが浅く(低呼吸)なると、脳に酸素を十分供給できないので、自律神経は必死に血圧と心拍を上げようと働きます。つまり自律神経は 24 時間働き続けることになり、これでは疲れがたまる一方です。いびきが気になる方は睡眠を扱うクリニックで相談してみてください。

年齢とともに自律神経も老化する

 実は肌や血管などと同様に、自律神経も老化します。一般的に年をとると疲れやすくなり、寝てもなかなか疲れが抜けないという中高年の方も多いでしょう。研究では、自律神経の機能は 60 代になると 10 代と比べて 25 %以下にまで落ち込みます。一度老化したら元には戻りませんが、機能低下を緩やかにし、年齢並みの機能を回復することは可能です。
 そのためには自律神経に過度な負担をかけないよう生活習慣を改めることが大切です。

脳を疲れにくくする生活習慣

 疲れをためないようにするには、副交感神経が優位になる時間を増やすのもポイント。生活に取り入れやすい習慣をいくつか紹介します。

❶起きたら朝日を浴びよう

毎日同じ時間に起きるようにしましょう。起きたら朝日を浴びることで体内時計がリセットされて、自律神経が整います。

❷軽い有酸素運動をしよう

ストレッチや散歩など軽い有酸素運動には、血流をよくして自律神経の働きを助ける効果があります。ただし、運動は寝る1時間半くらい前には終わらせるようにしてください。

❸ぬるま湯の半身浴で頭寒足熱

眠りをよくするためには、寝る1~2時間前に 38~40 ℃のぬるめの湯に、心臓の高さまでの半身浴で 5~10 分くらい入りましょう。寒い時期、額から汗がでるほど熱い風呂に入るのはNG。自律神経の負担になります。

❹鼻呼吸で脳を冷やそう

脳は酷使されて疲労しやすいこともあり、熱がこもりがちです。鼻の穴から喉へと続く鼻腔は、空気の通り道。鼻呼吸で冷たい空気を吸い込めば、脳を冷やすことができます。

❺音と香りでリラックス

小川のせせらぎや波の音など、ゆらぎをもつ自然音は副交感神経を優位にする働きがあります。アロマには自律神経を休め、睡眠の質を高める効果もあるため、上手に活用しましょう。 枕もとにアロマオイルを数滴垂らしたタオルを置くのもおすすめです。

❻鶏むね肉を食べよう

鶏むね肉に含まれる「イミダペプチド」は、脳の疲労回復を早め、眠りの質の向上をサポートする抗酸化成分が含まれています。消耗の著しい脳や筋肉などにピンポイントで届きます。

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今回お話を伺ったのは

梶本 修身 さん

東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。 元・大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。

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