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眠りの質を改善する生活習慣

睡眠の長さより、質にこだわろう

 夏になると、なかなか寝つけない、夜中に目が覚める、熟睡できない…など、睡眠の悩みを抱える人も増えてきているのではないでしょうか。睡眠は睡眠時間の長さだけでなく、質を高めることも大切です。
睡眠の質とは、睡眠の深さに関係しています。眠りは、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を交互に繰り返しています。個人差もありますが、大体 90 分サイクルで一晩に3~5回繰り返されています。
 睡眠の質のよさは、目覚めた時の体調で判断できます。頭がすっきりとして、体の疲労感がない状態であれば、質のよい睡眠です。反対に、なかなか目が覚めない、頭が重く体がずっしりとしている場合は、睡眠の質が低下しています。
 睡眠の質が低いと、脳と体が十分に休息できていないため、全体的なパフォーマンスが低下、免疫力が弱まり、風邪やほかの病気にもかかりやすくなります。最近の研究では、睡眠不足は糖尿病や心筋梗塞のリスクも高めることがわかっています。

睡眠の質をあげる食事の方法

 実は睡眠の質を大きく左右するのが食事です。朝食べてほしいのは、必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」。牛乳やヨーグルトなどの乳製品やバナナ、アボカド、肉類、豆類に多く含まれていて、朝、トリプトファンを摂ると、昼頃には気持ちを安定させて脳の覚醒を高める神経伝達物質「セロトニン」に変わります。夜になると、眠気を誘う「メラトニン」に変化。自然と眠くなり、寝つきもよくなります。
 アミノ酸の一種で神経伝達物質のひとつ、GABA(ギャバ)も摂取してほしい成分。交感神経の働きを抑えて体をくつろがせる副交感神経を助ける働きがあり、夜に自然な眠気を強めてくれます。食品では発芽玄米や胚芽米などの雑穀、漬物、小魚、ココアやチョコレートに含まれています。
 夜ごはんは少なめに、寝る3時間前には済ませましょう。寝る直前にたくさん食べると、消化のために体温があがり寝つきが悪くなります。また、消化にエネルギーを使うため、寝ている間に十分に細胞を修復できません。これが翌朝の疲労感につながります。
 また、寝る前の「入眠儀式」を決めておくのもひとつの方法です。歯を磨く、トイレに行く、電気を消すなど、寝る前にやっていることを「入眠儀式」と呼びますが、いつもと同じ行動をとると脳がすばやく睡眠モードに切り替わります。旅先などで眠れない時には、入眠儀式をすることでリラックスでき、スムーズに眠ることができます。

快適な睡眠環境の作り方

 眠りが浅い原因のひとつに、寝室の環境に問題がある場合も。寝る時は、光の刺激を避けるため、カーテンを閉めて「真っ暗」か「常夜灯」にします。明かりもできれば暖色系のフットライトの方が光の刺激が少なくておすすめです。
 また、適切な温度と湿度の調節も欠かせません。夏は暑さを我慢せず、冷房を使ってください。夜中に何度も起きて冷房を入れたり切ったりすると、ぐっすり眠れず、睡眠の質が下がります。おすすめのエアコンの設定温度は 28 度。また除湿機能を使って湿度を 50 ~ 60 %に保つようにすると、より快適な空間となります。
 冬の室温は 16 ~ 20 度が理想的です。手足が冷えて眠れない場合は、湯たんぽなどで布団を温めておくのがおすすめです。
 そして寝る時はパジャマに着替えること。部屋着とパジャマを比較した場合、パジャマの方が9分(※1)早く眠りにつけることがわかりました。これは「眠る前にパジャマを着る」など決まった行動をとると、脳が「今から寝るのだ」と準備を始め、自然と眠くなるからだと考えられます。着てみて心身ともにリラックスできるパジャマを着用してください。
※1 2013年、 ワコールとオムロンヘルスケアの「パジャマと眠りに関する共同実験」より

眠れない時の対策法

 眠れない時に無理に寝ようとすると、神経が高ぶり、逆に眠れなくなります。快適な眠りにつくためにいくつかのことを実践してみてください。
 まずは寝る1時間前に、 40 度以下のぬるめのお風呂に 10 分程度入りましょう。お湯の温度が高いと、交感神経を優位にして体を覚醒させてしまうので、要注意。湯船に入る時間がない時は、「クナイプ水療法」がおすすめです。やり方は、 43 度くらいのお湯をシャワーで出して、2~3分間、交互に左右の脚にかけます。そのあと、 20 度くらいの冷水を 20 秒程度、交互に左右の脚にかけます。心臓から遠い脚にかけることで、全身の血流が改善し、 温浴効果が高まります。
 また、呼吸法を取り入れた軽いストレッチをしてみてください。腕や脚を伸ばしたり、軽い前屈や首回しがおすすめです。ゆったりとした呼吸とともに行うとリラックス効果が高まります。
最後に、寝る 30 分前にはスマートフォンやテレビを見ないこと。液晶画面から出るブルーライトは空と同じ青色をしています。浴びすぎると脳は「今は昼なんだ」と錯覚し、心身をリラックスモードにする睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を減らします。
 疲れているのに、眠れない時こそ、「心身のリラックス」を意識し、今回紹介した方法を試してみてください。それでも改善されない場合は、睡眠専門医や睡眠外来に相談してみましょう。

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今回お話を伺ったのは

坪田 聡 先生

医学博士。睡眠専門医。雨晴クリニック院長。睡眠専門医として20年以上、現場に立ち続ける。著書に『女性ホルモンが整う オトナ女子の睡眠ノート』(総合法令出版)などがある。

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